
研磨布紙は「塗布研磨材」とも呼ばれ、紙または布の表面に研磨材が均一に接着剤で固着された構造(下図参照)をしている。
基材について
研磨布紙に使用される基材は大別すると、和紙・クラフト紙・ラテックス処理紙・処理布があり、それらは重量によ り区分される。
表−1 研磨布紙用基材の種類
基材の種類 |
研磨紙基材重量 g/m2 |
耐水基材重量 g/m2 |
基材厚み μ |
Aw |
85未満 |
110未満 |
約95 |
Cw |
95〜140 |
110〜150 |
約140 |
Dw |
140〜200 |
150以上 |
約190 |
Ew |
以上 |
--- |
約270 |
|
基材の種類 |
基材重量 g/m2 |
基材厚み μ |
Jw |
綿布 |
190〜200 |
340〜350 |
合繊布 |
190〜200 |
330〜340 |
Xw |
綿布 |
270〜280 |
460〜470 |
合繊布 |
270〜330 |
440〜540 |
和紙は主として手研ぎシート用研磨紙の基材とし採用されるが、柔軟性・ネバリが特徴である。ラテックス処理紙も和紙と同様に手研ぎシート用基材であるが、柔軟タイプ耐水研磨紙に利用されている。しかし研磨紙の主たる基材はクラフト紙であり耐水研磨紙及びロール・ベルト用研磨紙等の幅広い範囲で使用され、抗張力・柔軟性等の諸特性が目的に十分合致するよう作られている。各基材の主な特徴と用途は(表−2)の通りである。
表−2 各種研磨紙用基材の特徴及び用途
基材の種類 |
縦抗張力 kg/25mm |
特徴・用途 |
Aw |
約15 |
強度は弱いが、柔軟性に富み曲面研磨可能
手研磨、バイブレーションサンダーでの研磨用
和紙研磨紙はこのタイプである |
Cw |
約35 |
平均的な基材強度 耐水研磨紙の標準タイプ
ストロークベルトサンダーに標準使用される
ラテックス処理したタイプは手研磨、バイブレーションサンダー研磨用 |
Dw |
約60 |
強度がやや強いとともに、研磨紙も硬い
荒粒度でのストロークベルトサンダー研磨に使用
円形バイブレーションサンダーでの使用にも適す |
Ew |
約80 |
最も研磨紙強度があるが硬い
ワイドベルトサンダー・エッジサンダー等での強研磨に使用
スピンドルサンダーでも使われる |
また最近は、曲面研磨用として非常に軟らかい処理布を基材にした研磨布ベルトも多く利用されており、それらは(表−3)の通りである。
表−3 各種研磨布用基材の特徴及び用途
基材の種類 |
縦抗張力 kg/25mm |
特徴・用途 |
平織り綿布 |
約25 |
強度が弱いが軟らかい シート研磨布用
ストロークベルトサンダーでの細かい曲面研磨にも適するが使用に熟練が必要 |
朱子繊綿布 |
約40 |
平均的な強度を持つ 曲面に馴染み易い
ストロークベルトサンダー用研磨布としての標準タイプとして曲面の研磨に使用される |
綾織り綿布 |
約60 |
やや硬いが基本強度は強い
プロフィルサンダー用研磨布ベルトとして使用される
スピンドルサンダーにも使われる |
|
基材の種類 |
縦抗張力 kg/25mm |
特徴・用途 |
綾織り
(Jw) |
綿布 |
80〜90 |
一般金属の曲面研磨用
フラップホイールにも有効 |
合繊布 |
90〜100 |
非鉄金属及び非金属の曲面研磨用。特に水栓金具が主用途
ベルトのホツレ、ホソリ対策品 |
綾織り
(Xw) |
綿布 |
110〜120 |
一般金属研磨標準品
フラップホイールにも使用される |
合繊布 |
130〜170 |
金属研磨用、特に重研削に適する |
研磨材(材質)について
研磨材は天然産(ガーネット・フリント等)と人造研磨材(炭化珪素・溶融アルミナ等)に区分出来るが、天然産の研磨材は特性・形状等に均一なものが得難く、最近では工業的に利用される研磨布紙の多くは人造研磨材が採用されている。
天然研磨材
- ガーネット
火山岩中や河床の砂礫中に産出するガラス光沢のもろくて硬い鉱物であるが、成分により数種類のものがあり、総称してガーネットと呼ばれている。
主として手磨き用和紙研磨紙、木工用研磨紙として代表的であるが現在では溶融アルミナに変わりつつある。
- エメリー
主としてコランダム(Al2O3)と磁鉄鋼(Fe3O4)の混合系からなる鉱物で研磨布紙、バフ用としてサビ取りメッキ下地研磨によく使用される。
名称 |
化学式 |
ヌープ硬度 |
モース硬度 |
フリント |
Sio2 |
820 |
6〜6.5 |
ガーネット |
Al2O3・3FeO・3SiO2 |
1360 |
7〜8 |
エメリー |
Al2O3・Fe2O4 |
1400 |
7.5〜9 |
人造研磨材
- 溶融アルミナ
純粋なアルミナ(Al2O3)をアーク炉で溶融固化させたものを粉砕、整粒して研磨材とするが、不純物の含有によって、赤褐色になる。最も純度のよいものを4A(WA)と呼び順次3A、2Aと呼ばれている。
- 炭化珪素
1891年ダイヤモンドを人造しようとして発見された研磨材で現在最も広く利用されている研磨材の一つである。珪石とピッチコークスを1800℃の電気炉で反応させ作る。生成した炭化珪素の固まり(インゴット)を粉砕、水洗して粒度を揃え研磨紙等に使用される。
名称 |
化学式 |
ヌープ硬度 |
モース硬度 |
溶融アルミナ |
Al2O3 |
2100 |
9.4 |
炭化ケイ素 |
SiC |
2480 |
9.5〜9.7 |
ダイヤモンド |
C |
8000 |
10 |
各研磨材の主な特徴は(表−4)の通りである。
表−4
種類 |
記号 |
色調 |
主な性質・特徴 |
炭化珪素 |
CC |
黒色 |
硬度があるが脆い 形状がシャープである
研磨力が良い 仕上げ面が荒くなる傾向がある。
硬質塗膜・ボード類の研磨に適する
軟質塗膜の研磨では目詰まりが発生し易い
木地研磨では毛羽だち易い |
溶融アルミナ |
AA |
赤褐色 |
硬度はやや落ちるが粘りがある
鈍角な粒子形状から切込みは浅い
硬質塗膜では滑り傾向になり研磨力は小さいが仕上げ面も細かくなる
軟質塗膜では目詰まりが少なく研磨耐久力が良い |
WA |
白色 |
AA研磨材より形状が鋭いため研磨力がある
毛羽たちが少なく木地研磨に適する
ボード・硬質塗膜研磨では滑り発生 仕上げ細かい
軟質塗膜研磨では研磨性良く 目詰まりも少ない |
ガーネット |
G |
薄褐色 |
硬度が軟らかく鈍角な粒子形状 天然産研磨材
研磨力は弱いがソフトな研磨で仕上げ面は細かい
毛羽たち少なく木地研磨に適する |
人造研磨材
研磨材では粒子の大きさ(粒度)も研磨力・仕上げ面に密接に結び付くので重要である。粒度は研磨材の大きさに基づいて決めてあるが、その粒度の研磨材粒子が総て同じの大きさであると言うことではない。定められた範囲の大きさの粒子の集合体で、その平均径が粒子の大きさとされている。問題はその粒度に含まれる最大径の粒子で、その粒子が研磨仕上げ面の善し悪しにも関連している。
接着剤について
研磨布紙では研磨材を基材に固着さすために2回接着剤を使用する。これには天然産接着剤(グルー・ニカワ・ゼラチン等)と合成樹脂接着剤(フェノール樹脂・エポキシ樹脂等)がある。天然接着剤は取扱の簡単なことから、従来から研磨布紙に多く用いられて来た。しかし耐湿性に劣るという欠点があり天候により研磨布紙の研磨力変動が多かったので、最近では合成樹脂接着剤が使用される例が多くなった。合成樹脂接着剤は研磨布紙の用途に応じてそれぞれ特別に設計されたものが使用され研磨力・耐久性・仕上げ面荒さ等に特徴を持たせている。
研磨布紙メーカーによる研磨布紙の性能差の多くは、この接着剤の特性差に起因している。特に接着剤の種類によって研磨布紙の研磨力、仕上げ面粗さ、目詰まり特性等が著しく左右されるので、研磨紙の選定に当たっては注意しなければならない。
一般には硬質材料の研磨には硬い接着剤を採用した研磨紙を、軟質材料の研磨には軟らかい接着剤の研磨紙を使用するとよい結果が得られる。
接着剤による区分・特色
研磨布紙は一次、二次の接着剤の使用により、種々の製品となりますが、その接着剤の記号及び特色は(表−5)の通りです。
表−5
接着剤層 |
呼び名 |
記号 |
特色 |
一次接着剤 |
ニ次接着剤 |
にかわ |
にかわ |
にかわ(グルー) |
G/G |
最も一般的で、柔軟性に富み、仕上面は細かく、手又は軽機械の乾式研磨に使用します。 |
にかわ |
レジン |
オーバー・レジン
レジン・オーバー・グルー |
R/G |
柔軟性と耐熱性に富み、主として機械研磨に使用します。 |
レジン |
レジン |
オール・レジン
レジン・オーバー・レジン |
R/R |
耐熱性、耐湿性に富み、高速、高荷重下の機械研磨に使用します。 |
耐水性レジン |
耐水性レジン |
耐水(ウォーター・プルーフ) |
W/P |
基材は耐水処理を施し、接着剤も耐水性レジンを用い主として湿式研磨に使用します。 |
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